
待ち時間解消と約2,000万円のコストカットに成功!窓口業務のスリム化に取組んだサンシャイン水族館様に聞く、電子チケット活用術
ケース・スタディ
東京・池袋にある「サンシャイン水族館」様では、お客様の待ち時間短縮を目的に2018年に電子チケットシステム「ウラカタチケット」を導入。その後コロナ禍での営業再開をきっかけに、2020年7月より、日時指定制チケットを導入することで新しい運営方法を確立し、設備コストや人件費を大幅に削減することに成功しました。運営を担当する廣澤様と吉野様に、コスト削減や来場者数最大化の秘訣を伺いました。
最大90分以上あった並び時間が大幅に短縮。電子チケットによるスムーズな入場体制を整える
ー電子チケットシステム「ウラカタチケット」導入の最初の経緯を教えてください。
(廣澤様)
最初にウラカタチケットを導入したのは2018年。当時はコロナ前で、ソーシャルディスタンスなどの感染対策が不要であり、水族館としてもなるべく多くのお客様をご案内し集客して行くスタンスでした。
ただ、その中でボトルネックとなっていたのがチケット購入までの待ち時間。水族館が建物の屋上という場所柄もあり、施設の1階から屋上までのエレベーターに乗るのに列ができてしまうことが多々ありました。また、屋上に上がってからも窓口でチケットを買うために列に並ぶ必要があり、入場までに時間がかかってしまう状況を解決することが最初の導入の目的でした。
ーウラカタチケットを導入したことで実感した効果を教えてください。
(廣澤様)
今まで1階エレベーターの列に並び始めてから水族館に入るまでに最大90分以上発生していた待ち時間が、WEBチケットを導入してから大幅に短縮できたことが効果として一番大きいです。チケットを購入するとすぐにWEB上でチケットが発行され、スムーズに入れるという点が入場効率の改善にはすごく役に立ちました。
また、事前のWEB購入を促したことで、前年に比べ約10%入場効率が上がりました。
日時指定チケットで事前に来場人数を把握し、適切な人員配置でコストカット
ーウラカタチケットで日時指定制を取り入れた経緯を教えてください。
(廣澤様)
2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降は休館を余儀なくされていましたが、同年6月頃、入場者数に制限を設けて営業を再開することになりました。とにかく最初は営業ができるだけでも良しとして、世の中の状況を見て探りながら少しずつ入場者数を増やしていこうという方針で動いていた所に、ちょうどアソビューで新しいシステムが出来上がったというお話があったので、いち早く導入することにしました。
ー日時指定制チケットを導入されて感じる効果があれば教えてください。
(廣澤様)
日時指定を設けての営業は今までやったことがなくチャレンジだったのですが、1日で入るお客様の数が事前に把握できるなど、ポジティブな面が多く見えてきました。
それまではその日にどの程度の人数が来場されるか把握できておらず、人員を多めに配置していました。事前に来場人数をある程度把握して体制を組めるようになったことで、業務効率化につながりました。
現在繁忙期においてもコロナ前の約7割となるように来場者数をコントロールしています。それに伴い、チケット販売による収入は減っていますが、人員体制を整えることができたおかげで支出面もかなり削減できています。
(吉野様)
コロナ5類移行後も日時指定制は継続しています。コロナ禍で築き上げた効率的なオペレーションを元に戻すことは現実的ではなく、なにより客数を戻すことはお客様満足の低下につながりかねません。平日は入場者数を制限しておりませんが、休日はこれまで同様に日時指定チケットを活用していこうという方針です。
ー具体的にコストカットの面ではどのような効果がありましたか?
(廣澤様)
コスト面での効果については2つあります。1つ目は、以前は土日などに案内スタッフを7、8名ほど外部に委託していた分が自社スタッフで調整できるようになったことですね。
コロナ前は、夏休みやGWなどの1日の来場者数が1万人を超えるような時期は、列整理だけでは賄いきれず、入場整理券を手で配布することもありました。繁忙期は来場者数が予測できないため、人員を多めに確保しておく必要がありましたが、現在は当時のように、終日エレベーターでお客様のご案内をするのではなく、混雑した時だけ自社のスタッフで対応しています。営業再開以降、追加の案内スタッフを業務委託先にお願いしたことは一度もなく、営業を継続できています。
外部委託する事がなくなった分、自社スタッフを数名雇うなどの調整はありましたが、全体で見ると人件費が大幅に削減できました。当時から自社内のスタッフで運営を回せればもっと費用を抑えられるだろうとは考えていましたが、来場者数の変動もある中で常に人員を確保することが難しく、外部へ委託していた状況だったので、そこを整理できたことで年間約1,000万円程度のコストカットが実現しました。
2つ目は、日時指定チケットというよりWEBチケットの導入自体に言えることですが、来場者の8割以上がウラカタチケット経由でWEBチケットを購入する様になったので、窓口のPOSレジの台数が削減できたことです。以前は窓口のPOSレジ4台と自動券売機2台の合計6台でチケットを販売していたのですが、更新のタイミングでPOSレジを3台減らし、その分の費用を削る事ができました。
また、それに伴い窓口でチケット販売における人員も減り、教育に係るコストも大幅に削減できたため、外部へのスタッフ委託費と合わせて約2,000万円のコストカットをすることができました。
ー顧客満足度としてはいかがでしょうか。
(廣澤様)
エレベーターやチケット購入時の待ち時間を無くしたことでお客様の時間を奪うことがなくなったことと、来場人数を絞っているので館内をゆっくり見られたという声はいただいています。
サンシャイン水族館は他の施設と違い複合施設の中にあるので、並ばなくなった分の時間でお食事をしていただく、ショッピングを楽しんでいただくなど、時間を有効活用できたことが結果的に顧客満足度に繋がったのかな、と思います。
コロナ禍で求められる集客の形。限られた枠の中で最大化を目指す
ー日時指定チケットの活用において工夫されている点を教えてください。
(吉野様)
入場者数の上限が決まっている中でも販売枚数を最大化するためにデータを元に常に分析しています。エレベーターや、館内の混雑状況によって販売枚数を臨機応変に変えつつ、安定して販売できるようになるまで約1年かかりました。
(廣澤様)
試行錯誤する中で、お客様の購買傾向が分かりました。例えば毎時00分・30分のチケットに対して、毎時15分・45分は購入されづらいという点です。当初は各時間にてチケットの販売数を均等にしていましたが、これを受けて00分・30分は販売枚数を増やし、それ以外の時間帯は少なくすることで綺麗に全時間帯が売り切れるようにするなど調整は常にしていました。
しかし、今ではお客様の心理も変わってきたようで、希望する毎時00分・30分の時間でチケットが購入できなかった場合、その間の時間に購入していただけるようになりました。特に冬時間営業の土日は、夕方には当日の全時間帯のチケットが売り切れるようになり、試行錯誤の結果が出てきていると感じます。
また、ダイナミックプライシングを細かく設定し、「土日よりも平日がお得になりますよ」という見え方にして平日にもお客様が来場してくださるように調整しています。
ーダイナミックプライシングを実施されてみて、顧客単価などに変動はありましたか?
(廣澤様)
販売数に関しては変わりなく、お客様もチケット単価の値上げ・値下がりは気にしてないという印象です。ただ、通年で始めるのは今年度が初めて。前回は繁忙期とそれ以外の2段階でしたが、今年は、土日と繁忙期などで、もう1段階変えて3段階の料金体系でスタートしています。
(吉野様)
ウラカタ分析を1年間やってみて分かったことが、お客様に水族館へ行く理由を伺うと、「クーポンがあるから」などではなく、「海の生き物を見たいから」という理由がほとんどを占めていたことです。社内のスタッフ同士で話していても、「何かを体験したい」や「見たい」という気持ちや行動に対してお金は気にしませんという声も多かったので、ここに行きたい、という気持ちには費用面であまり影響を与えていないのだろうという印象を受けました。
ー今後の課題があれば教えてください。
(廣澤様)
ウラカタチケットの二次元コード以外にも導入しているPOSレジ、年間パスポートなど、全部を一つの二次元コードで管理したいと考えています。様々なチケットがあるので、まずはそこを整備しないと、皆様に来場していただいてもしっかりとデータを管理しきれません。まずは全てを統一できればと思っています。
ーアソビューに今後期待することがあれば教えてください。
(廣澤様)
顧客分析なども扱えるお得なセットプランなどがあれば利用したいな、と感じます。
(吉野様)
というのも、今回ウラカタ分析でたくさんのデータを集めることができて、とても有効だったな、と感じていています。ただ、ランニングコスト面なども考えて分析までのフォロープランまでは入れておらず、顧客のデータを集めるだけで分析までできていないのが現状です。分析にも力を入れていきたいと思っているので、分析まで行ってくれるようなプランがもう少しお得に利用できたら利用したいです。
お話を伺った方
株式会社サンシャインエンタプライズ
アクアゲストコミュニケーション部 次長
廣澤 学様
アクアゲストコミュニケーション部 課長代理
吉野 祐毅様