電子クーポンでDX推進。早期完売&県内外からのスキー客で賑わう「秋田県」は誘客促進で観光産業の復活を目指す

ソリューション

秋田県の冬季誘客促進を目的とした「秋田県プレミアムスキークーポン」は、2022年の冬より紙クーポンを廃止してアソビュー!の電子クーポンへと変更し、県内外の方向けに秋田県のスキー場を最大50%OFFで利用できる割引サービスを提供しました。安定した集客率の確保と早期売り切れを達成、また現場の秋田県スキー場協会様の発送作業や管理業務の大幅に削減されました。秋田県観光振興課の齊藤零様と秋田県スキー場協会の鈴木一成様に、新型コロナウイルスをきっかけとした誘客事業のアイデアと今後の展望について伺いました。

県内14のスキー施設の割引サービスで秋田県内外のスキー客を取り込んで冬を盛り上げる


-秋田県の冬季誘客事業の取り組みについて教えてください
秋田県 齊藤様
2022年の冬の誘客事業として秋田県内のスキー場で使用できる割引率が最大50%の「秋田県プレミアムスキークーポン」の販売を行いました。同様な取り組みとしては、2021年度もスキー場での割引施策のキャンペーンを行っていたのですが、冬季誘客事業の大きな契機としては、やはりコロナ禍になったことがあります。
県内への旅行の需要喚起として実施したものでして、秋田県でもスキー場というのが冬における有力なコンテンツの一つで、それをフックに県内を周遊していただくことを目的として実施しました。

-コロナ以前もスキー需要の喚起施策を行っていたのですか
秋田県 齊藤様
スキーも一つの要素ではありましたが、直接スキー場に来てもらう施策よりかは、これまでは、どちらかというとOTAサイト(旅行サイト)に特設ページを掲載したりしていました。その後、コロナを契機に、スキーは秋田県としても分かりやすいレジャーであることと、スキー人口も県内で多く人数がいることから、需要回復を目的としてクーポン事業を実施しました。

-過去のスキー事業の施策はどのような形でやられていたのですか
秋田県 齊藤様
2021年度は基本的に、秋田県民の方に利用してもらうことをメインに考えた紙クーポンを実施しました。当時は緊急事態宣言が発令と解除が続いていた時期で、解除には旅行や宿泊の割引キャンペーンも別で行っていましたが、なかなか対象を県外に広げられる状況にならず、結局、県民の方のみに使っていただいたという結果になりました。
過去を遡ってもスキーだけの割引キャンペーンは実績がありませんでしたが、そんな状況下でも多くの反響をいただき、申し込み数もたった1日で上限に達するぐらいの人気はありました。
枚数は第一弾、第二弾に分けて、実施していたのですが、第一弾を販売開始した際は、当日の深夜には売り切れてしまうほどでした。
秋田県スキー場協会 鈴木様
そうですね、無料でやってたものですからかなり人気で、すぐに申し込み上限に達したという感じです。

-過去の施策では紙クーポンだったと伺いました。どのようにお客様に届けられていたのですか
秋田県 齊藤様
紙クーポンの上限枚数は、第一弾、第二弾ともに約1万件で、合計2万件の準備がありました。お届けする流れとしては、まずはウェブサイトで申し込みをしていただきます。申し込みをして、当選か先着順で、対象となる方に事務局の方からハガキを送って、そのハガキを直接スキー場に持ってきていただいて、その場で実際のチケットに引換えるという流れでした。
秋田県スキー場協会 鈴木様
発送対応や管理などの運営は秋田県スキー場協会が担当していたのですが、これが結構手間がかかる作業でして、ハガキに宛名を印刷するだけでもかなり時間を要しましたね。ウェブサイトから申し込みがきたら大体1週間以内にハガキを送っていたので、スピード感も重要な作業でした。

県としてもDXを一気に推進。システム化で販売データ収集・分析を習慣化する

-2022年に紙から電子化システムへ変更した経緯やご事情を教えてください
秋田県 齊藤様
まず一つ、デジタル化の促進っていうところは、考えとしてありました。秋田県内でも、観光に限らず様々な面でデジタル化が進んでいないという状況があり、県として県内の市や町、民間事業者含めて、デジタル化に力を入れて促進していこうという取り組みをしていました。観光促進・誘客事業に関しても、手法として電子化を取り入れていくことで、一気にデジタル化が進むのではという考えがあって、今回導入を検討するに至りました。
秋田県スキー場協会 鈴木様
電子化されて良かった点としては、集客に対する告知や販売のデータ収集が容易にできるようになったことと、あとは印刷物の発注ですね。その管理に手間がかからないというのが良かったなと思います。やはり、この誘客事業をやることによって、県内のスキー場に来るお客様が、非常に利用しやすくなって集客効果があるっていうところですね。
-客数の推移としては、前回と今回に変化はありましたか
秋田県 齊藤様
前回より、全体の数だけで言えば増加傾向にあると思います。。秋田県スキー場協会様に以前まとめていただいた秋田県内14のスキー場資料によると、昨シーズンと比べて来場者自体は1%増でして、その他の売り上げなどでかなり影響は出ているような感じですね。
来場者数は、積雪の状況などの外的要因で大きく変わることが多いので、あまりキャンペーンの効果は見えにくい部分なのかなと以前から感じてましたが、それよりも売り上げというところで、例えばレンタルとかスキースクールみたいなところで、影響が出ているのかなっていう印象ですね。
秋田県スキー場協会 鈴木様
県内全体ではないのですが、たざわ湖スキー場に限ると、今回アソビュー!を経由したチケットの購入枚数が約1万2800枚出てまして、たざわ湖スキー場の来場者が約9万4500人ほどでしたので、13.6%くらいがアソビュー!が占める割合になります。もしかすると発券枚数で計算するともう少し数値は上がるかもしれないですけどね。
秋田県 齊藤様
今回の施策「秋田県プレミアムスキークーポン」は、秋田県内だけでなく日本国内の方もターゲットとして打ち出したので、県内6割、県外から4割という利用客比率で、県外客の誘致という面では十分な結果が得られたと考えています。


▲クーポンを電子化することによって販売データの集計が効率化した

県外だと、どの地域から来られている方が多かったですか
秋田県 齊藤様
一番多かったのは東京、岩手、神奈川ですね。元々、秋田県に来る旅行者のボリュームゾーンで言えば、東京、東北の隣県、岩手、宮城、山形などが多い傾向にあるんですけど、それが今回のキャンペーンにも表れているのかなっていうところはありますね。

戦略的に販売チャネルを増加&現場は作業時間が大幅に短縮

-電子化に移行していくにあたって、アソビュー!を選んだ理由を教えてください
秋田県 齊藤様
大きく分けて二つありまして、一つは既に長野県の方でスキーの割引施策をアソビュー!を通して実施したという実績があったことが理由です。
二つ目が個人的には重要かなと思っていて、電子化をするとなると本当にさまざまな手法があって、色んな業者さんがいるのですが、アソビュー!はOTA、一つの販売チャネルの確立にもなるというところが大きいと個人的には思っています。今回のキャンペーン上での販売で終わりではなく、次年度以降も各スキー場さんからの希望があれば、そのままアソビュー!に掲載を続けて販売をすることもできるので、新しいチャネルが生まれて、そして一過性のキャンペーンにならないというところを重視していた感じですね。
-他県での事例を参考にすることはよくあるのですか
秋田県 齊藤様
やはり過去に事例や実績のある施策は安心感もありますし、県内で押し進める際に内部からの理解も得られやすいですしね。
長野県での事例を知ったのはアソビュー社との打ち合わせの流れだったと思います。その中でご提案というか、一つの事例としてご紹介いただいたので、長野県様にも直接お話を聞いて参考にさせてもらい、今回の施策につながりました。
スキー事業の施策は数がそんなにないので、事例があると取り組みやすいなとは思っています。私の方でも多少スキー関連の事業を調べたりしたのですが、スキー場はキャンペーン期間以外はウェブサイトを閉じていたりするので、あまり情報がなくて困っていました。あと事業者さんの方でも、一過性のキャンペーンで終わるよりかは、継続した取り組みになっていくという点が今回良かったポイントだったりしたみたいです。
秋田県スキー場協会 鈴木様
昨年からアソビュー社の情報をいただいてたということで、その情報に倣って動くことができたので、やりやすかったところではありますね
-電子化に移行されて、スキー場では変化に対する混乱や逆に良かったことはありますか
秋田県スキー場協会 鈴木様
良かったことは先ほど言ったように、データ管理や印刷の煩雑さが軽減された点が現場でスムーズになったところですね。
混乱としては一部ではありますけど、スマートフォンの端末を持ってない方から購入に関するお問い合わせがあったり、スキー場にWi-Fi環境が整ってないという状況があったりしたのですが、それもすぐに改善されて、最終的には秋田県スキー場協会に加盟している14のスキー場全てに参加していただけたので、結果としては満足しています。
-前回は2万件販売されていましたが、今回と数値で比較することはできますか
秋田県 齊藤様
前回の2万件というのはハガキの枚数なので、そこから使われた券の割合となるとまた変わってくるのですが、昨年は無料チケットで、販売金額がそのままチケットの金額という形なので、トータルで約5,000万円が最終的なクーポンの生産額になっています。
前回は、発行しても使われなかった未使用券もあり、使用実績は91.7%でした。今年度の利用実績は、ほぼ完売だったっていうことを考えると、以前よりも良かったのかなと、単純にそこの比較でいえば良かったのかなと思ってます。

新型コロナを乗り越えたあと、給付金や割引に頼らない誘客プロモーションが課題

-今回のクーポン施策を振り返ってみて、どのような所感をお持ちでしょうか
秋田県 齊藤様
まずは、全部売り切れたというところで、昨年度よりも良かった点かなと思います。当初どれくらい売れるのかが正直想像しにくくて、アソビュー社との打ち合わせでも、予測仕切れない部分があるという話もしていて、秋田県内部でも販売数の最低5割まで行けばいいんじゃないか、という話も出ていたくらいなんです実は。ですが前回みたいに1日で売り切れることはなかったものの、販売数も徐々に上がり、最終的に完売という結果になったので、すごく良かったのかなと思いますね。
秋田県スキー場協会 鈴木様
この事業は県の施策があってのことなので、継続していただければ一番ありがたいのですが、同じような施策はできなくても、今回は50%OFFということで大変人気があるクーポンでしたが、今後も10%や20%OFFでも続けていただければと思っています。あと前回は無料でしたが、今回は50%OFFでも、その割には購入が多くて売り切れたので、非常に良かったなと思っているんです。
-今後や来期に向けて取り組んでいきたいことはありますか
秋田県 齊藤様
先ほど鈴木さんからご要望をいただいたのに言いにくいお話なのですが、なかなかこういった割引施策は、正直どこの自治体もですが、実施が難しくなってきているんです。コロナの際の旅行需要喚起の給付金みたいなところが、この数年かなり潤沢にあったので、それを使ってのキャンペーンでしたが、今後はクーポン施策は少なくなっていくのかなと思っています。
ただ、その上で割引がなくなっても、どういう風に展開すれば冬の誘客につなげられるのか、というところは秋田県としても、冬の需要が落ち込んでしまうのは大きい課題として認識していますので、そこに対して令和5年度においても冬のプロモーションには力を入れたいと思いっています。どういった形で進めるかについては、今も準備を進めてはいるのですが、いずれは割引に頼らない形で秋田県への誘客につなげられればと考えています。

お話しを伺った方

秋田県観光振興課の齊藤零様(左)
秋田県スキー場協会の鈴木一成様(右)