展望台入場+付加価値を付けた商品ラインナップでコロナ禍の国内需要を喚起。梅田スカイビル様に聞く商品造成の秘訣

ケース・スタディ


大阪の街を一望する「梅田スカイビル・空中庭園展望台」では、2019年よりウラカタチケットを導入しています。新型コロナウイルスにより集客の7割を占めていた訪日外国人が激減したタイミングで、商品造成を開始、ウラカタを活用して今ではコロナ前より3割多い国内観光客を迎えています。客層の変化と収益減をどのように乗り越えたのか、その取り組みと今後の展望を積水ハウス梅田オペレーション株式会社 眞下浩二さんに伺いました。

電子チケットの導入は数字を意識した運営へと、メンバーの意識改変に繋がった

-ウラカタチケット導入の経緯を教えてください
以前から、他社システム経由で公式WEBサイトから展望台入場チケットの購入を可能としていました。しかし、購入後に紙チケット発券の手間が生じること、発券手数料分の料金が上乗せされているため、お客様にとってはWEB購入のメリットがない状態でした。そのため、WEB経由で購入する方はほとんどいらっしゃらない状況で、むしろ、WEBで事前購入をしたことで直接来場より入場料が高くなることに対してご不満の声を伺うことすらありました。これを改善したく、2019年からアソビューの電子チケットシステム「ウラカタチケット」を導入することとなりました。

コロナ禍を生き抜くべく、国内ゲスト向けに入場券+オプションプランの造成を開始

電子チケットシステムにしたことによる変化はありましたか
電子チケットの購買実績が可視化され、全スタッフが「数字」を意識するようになりました。それまでこういった取り組みをしてこなかったので、WEB上でチケットを買ってくれる人がいると分かったことも大きな学びでした。

梅田スカイビルさんは、入場券とオプションをセットにした多彩なプランが特徴的です。こういったプランの造成を始められた経緯を教えてください
2019年11月にウラカタチケットを導入して数か月でコロナ禍となり、これまで集客の大半を占めていた訪日観光客が激減しました。そこで国内のお客様をターゲットに、付加価値を付けて単価アップを目指すことを販売戦略として掲げ、入場券とオプションをセットにしたプラン販売を開始しました。もともとウラカタチケット導入時から利用人数だけでなく、アソビュー社経由での流通額を上げたいと思っていたことも、その後押しとなりました。ただチケットを売るだけでなく付加価値を付けたプランを販売することで、アソビュー社にインパクトを残したいと考えていました。

特に人気のあったプランはありましたか
2020年のクリスマス、特に夜景が綺麗なエリアに2~3人が入れるプライベートテントを設置して販売したリザーブシート付きプランです。11月中旬からクリスマスまでの期間で販売しましたが、WEBメディアに掲載され、11月中に全日程分が完売しました。

実は、このプランは初めて価格変動制(ダイナミックプライシング)を取り入れたものです。【月~木曜】、【金曜】、【土日・祝日】、クリスマス当日などの【特別日】と料金を変動させました。テントまでのアテンド時や写真撮影時に直接ご評価の声をいただいたり、asoview.comのクチコミでも平均4~5と高い評価を付けていただくなど、お客様にとって特別な体験の提供と同時に売上最大化に取り組めたことで強く印象に残っています。

ゲスト人気のあったハートロックをプラン化。ゲストの声を基に新色を追加し、梅田スカイビルを代表する人気プランに成長。

現在はどのようなプランが人気ですか
ハート型の南京錠=ハートロック付きプランや、同様に「色」をフックとしたソーダフロート付きプラン、スパークリングワイン付きプラン、世界中のビールが楽しめるプランなどがあります。

ハートロックプラン、近年特に人気だと伺っています。プラン造成の経緯を教えてください

コロナ禍、入場券+オプションプランを増やし始めた2020年から、2年以上販売しています。実はハートロックそのものは15年ほど前から、来場日と名前を刻印して飾ってもらえるよう、カップル向けに販売していたものです。
数年前たまたま著名人が来場され、ハートロックを手に取ってもらったことをきっかけに、ファンの方が聖地巡礼として訪れていただけるようになりました。当施設では刻印サービスも行っているので、ファンの方がご自身の名前と、ご自身が応援している=推しているメンバー“推し”の名前を刻印して飾って行くのです。コンサート等が自粛されていた当時にこういったムーブメントが起き、これを活かした商品造成を開始しました。

ハートロックプラン造成にあたって工夫されたことはありますか
お客様を巻き込んで商品をバージョンアップしたことです。
ハートロックはゴールド、赤、ピンクの3色のみでしたが、現在は10色展開しています。接客中に他の色はないか?と問合せをもらっていたので、“推し”のイメージカラーに対応する色への需要を新たに感じ、若いお客様が多いことを理由にTwitter上で「どの色が欲しいですか?」とアンケートをとりました。この投稿がリツイート機能で何千もの方に拡散されていき、その声を基に新カラーを増やしていった結果、いまでは1か月平均4,000もの方々にハートロック付きプランをご利用いただいています。もともとお客様にご支持いただいていたハートロックを活用し、お客様の声を聞きながらカラー展開を増やしていったことで人気プランに育ったと思います。正直ここまで人気になるとは思っていませんでした。

在庫不足によるゲスト満足減を防ぐため日時指定チケットへ切り替え

ハートロックプランは当初オープンチケットとしていたものを日時指定チケットとしてもらいました。その背景を教えてください
お客様に、希望するカラーのハートロックを必ず手にしてもらうため日時指定制としました。ハートロックは地元の工場で作ってもらっているのですが、プラン化で従来の5~6倍にも売れるようになり、販売数が製造数を凌駕しかねない状態となっていました。しかし、全国からハートロックを楽しみにお越しいただいているので「その色はもうありません」ということはできません。販売個数をコントロールし、また事前購入にすることで人気を一過性で終わらせないようにするべく、日時指定チケットを導入しました。
現在は工場と交渉し、製造ラインを増やしてもらっていますが、日時指定チケットにする前はハートロックが足りなくなってしまうかもしれない、と夢に見るまで在庫に対する不安を抱えていました。アイドルのコンサートやライブ、個人活動としての舞台や誕生日などがあると、特定の色が一気に無くなってしまうので、関西地域でのイベントや日時指定チケットの売れ行きを注視しながら、在庫コントロールに気を付けています。

日時指定チケットの導入に際して懸念点などはありましたか
現在ではハートロックプラン以外のプランにも日時指定制を導入していますが、当初「予約数が減るのでは?」という懸念は、少なからずありました。展望施設という特性から、お客様が「もし天候が悪かったら…」と予約を躊躇してしまうことが想定できたためです。
そこで見直したのは、キャンセルポリシーです。オープンチケットの時は予約後のキャンセルを不可としていましたが、日時指定制の導入以降は、前日まではキャンセル料金不要で取り消しを可能にしました。チケット購入におけるお客様の不安を取り除き、利便性向上を実現しています。

ウラカタチケットの活用は認知獲得に繋がる

商品の販売を行う際に、意識されていることはありますか
一番意識をしていることは「認知の獲得」です。
当社施設に興味を持ってWEBサイトに訪れて来てくれる方が、必ず代表的な当社のプランを見てもらえるように環境を整えています。WEBサイトを訪れた人は、大半がシンプルに入場券購入を目的としていて、隅々までWEBサイトを見ているわけではないと思っています。必ずしも購買に至らずとも、入場券購入に至る過程において「こういうプランもあるんだ」と知り、利用してもらえる環境を整えておくことは重要だと考えています。


梅田スカイビル様 プランページ

コロナ禍を経て、ウラカタチケットをどのようにご評価いただいていますか
国内ゲストが主となったことで、ウラカタチケットやasoview.com経由での集客が導入当初2%程度だったものが、今では20%近くまで増えました。国内ゲスト来場者数はコロナ前2019年に比べ3割増を記録しています。流通額も当初より10倍近くとなり、全体的な売上向上に貢献してくれていると感じています。他社も利用していますが、国内集客はほとんどアソビュー社頼みで、今後もお世話になっていく予定です。

今後の展望を教えてください
訪日外国人の回復が見込まれることから、海外から来場されるお客様に指名買いをしてもらえるような、施設ブランディングを行っていきたいと考えています。新型コロナウイルス到来前、当施設のお客様は訪日外国人が全体の7割を占めていました。海外から来られるお客様の多くは人気観光スポットを複数巡ることができる「周遊パス」を利用してのご来場でしたが、これらのお客様に通常入場券や入場券+オプションプランを選んでいただくことが目標です。
海外のお客様にとって施設を指名買いすることは不安だと思いますが、直接「空中庭園がいい」と正規料金で購入をしてもらえるように、魅力的な施設作りと商品造成をしていきたいと思っています。

お話を伺った方
積水ハウス梅田オペレーション株式会社
運営事業部 係長 眞下浩二様