アソビューのルーツ~ミッションはこうして生まれた~

COLUMN

アソビュー社では二週に一度「ワイガヤ」と称し、ランチを食べながら、社員の素朴な疑問に社長がざっくばらんに応えるという社内イベントが開催されています。

第一回のワイガヤでは、当社のミッションである『ワクワクをすべての人に』が生まれた背景について質問が上がりました。

当社は、仕事のやりがいについての調査で、「ミッション共感」の項目の満足度が非常に高い組織です。

では、そのミッションはどのように生まれたのか。日頃メディアで報道していただいている内容よりも、より率直に語られた当社代表・山野の言葉を、書き起こし形式でお届けします。

モデレータ-:島根 宏幸 質問いきましょう。「当社のミッションは『ワクワクをすべての人に』ですが、山野さんは、なぜそれを実現しようと思ったのですか」と、「起業した当初の理由を教えてください」とのことです。

アソビュー代表取締役社長 山野 智久 はい。えっとですね、これはよく聞かれて、メディア向けにもよく話してるんですが、それは広報にも手伝ってもらって綺麗にまとめてるんですけど…

なんかね、会社も宇宙もたぶん一緒なんですけど、カオスの状態ってのが必ずあって、なんか僕が始めから、みかん箱を並べて机にして「ワクワクだー!」とか言ってたわけじゃないっていう。

(会場笑)

なのでその辺を正直にお話させていただきたいなと思います。

アソビューでは二週に一度の「ワイガヤ」で、社長とメンバーがざっくばらんに議論しています。

ビジネスは社会を良くするためにある

僕の場合は、前提として、会社を立ち上げる時に「これだけは絶対大切にしたい」と思っていたことがあって、それは「とにかく世の中のお困りごとを解決できるビジネスをやりたい」ということでした。

なぜその考え方が前提としてあったかというと、僕は学生時代にフリーペーパーの発行を主宰していたんですが、その時に、広告主が広告出稿した後に、3万5千円の広告費を払わずに夜逃げした、という事件があって、その時になんか悲しかったんですよね。

なんで悲しかったかって言うと、もちろん当時のフリーペーパーの広告の価値をどう捉えるか、という問いがあるのは前提なのですが、少なからず、そのクライアントは売上に困っていて、集客を期待して、なけなしのお金を広告に投資する意思決定をしたんだと思ったんですね。

広告として価値がなかったと、言いたいんじゃ全然ないんですけど、もしかしたら、クライアントの個別事情の期待にはお答えできなかった。

だから夜逃げすることになったのかなぁと。真実はわからないので、あくまでも予想ですが。でも、僕の感情は少なくとも嬉しくなかったんですね。

じゃあどうやったら嬉しいのかと考えると、やっぱりお客さんに喜んでもらえたら嬉しいと思うんですね。つきつめて考えると、お困りごとを解決すれば、喜んでもらえるじゃないですか?

だから、商売は、なんでもいいのですが、お困りごとを解決できないとダメだなって思ったんですよね。

あと僕は学生時代からずっと起業するんだと思っていて、経営の神様と呼ばれる稲盛和夫さんとか、松下幸之助さんとかの本をけっこう読んでいたんですね。

そういうのを読んでいて、ビジネスは何のためにあるかっていうと、社会に対して貢献するためであり、社会を良くするためにあるんだなって思ったんですよ。

起業家だった祖父の影響

あと、うちの祖父も実は起業家で、昔は50人くらいの会社で、北千住の下町でネジを作ってたんですけど、幼少期から「お客さんに損させちゃあかんよ」ってずっと言われてたんですよね。

これは余談ですが、祖父のエピソードで言うと、うちの見積もりってURL2つないと承認されないと思うんですけど、あれは小学生の時に教えてもらったんですよ。

祖父に買い物を頼まれてネジを買いに行ったら「お前これA店とB店と両方見たのか」って言われて、「見てない」って答えたら頭ひっぱたかれて、「商売っていうのは比較検討して、一番いいものをお得に買うんだ」って言われて。そういうのが血肉になってます。

それが全体としての僕の商売感。うちのバリューである「For You」の根底にある想いです。

軸となった3つの思想

「世の中のお困りごとを解決する」を前提として、起業に際して大事にしていた考え方は3つあって、まずは、世の中にない新しいことにチャレンジしたい、という考えがありました。

模倣して何かをやるというよりも、ないものをゼロから生み出すことにこだわりたい、と思っていました。

2つ目は、成長産業で勝負したいっていうことだったんですね 。これは、『IT×何か』だと思っていました。

起業する前、HRの事業をやっていた時に、すごく尊敬するプロパンガス屋の社長がいたんですけど、その方は人としてものすごく素晴らしくて、従業員からも慕われていて、一体感のある会社を経営されていました。 でも、採用ニーズは全然ないんですよね。

逆に、平気で遅刻してくるし、電話もメールも返ってくるかどうか分からないようなIT企業の社長もいて、それはそれでどうかとは思うんですが、その方からはものすごく仕事をもらったんですよ。

これは何が違うのかなっていうと、プロパンガスっていうのは都心部では都市ガスが整備されて、市場としては縮小していってたんですよね。

一方でIT企業っていうのは、2003年ですかね、当時、伸び盛りだった。

結局、成長産業の導入期、これから盛り上がっていく、必要とされるであろうマーケットに入って成長していくことが、企業成長においてすごく重要なんだなっていうことを目の当たりにして、この2つ目の、成長産業で勝負したい、というのがありました。

3つ目は、これはちょっと大きな話なんですけど、僕は日本人として生まれたので、日本のGDP底上げに貢献出来るくらい、でかいことをやりたいなって思ってたんですよね。

せっかくやるんだったら、社会にインパクトを与えるくらいの志、規模じゃないと、やってて意味ないんじゃないかなと思って。

成長産業の導入期にあるビジネスは何か考えた

その3つを軸に、じゃあどういうビジネスをやっていこうかと考えたんですが、一番の論点は、成長産業になりえるのは、IT×何なのかっていうところで、そこにはけっこう悩みました。

当時、僕が思ったのは、日本の人口って減っていくので、単純に考えると、お財布が減っていくっていうことになる。

じゃあ外貨をどうやって稼ぐかっていうのが、成長産業になりえるんじゃないかと仮定しました。

で、外貨が稼げるビジネスって何かを調べてみたら、経産省がやってる『クールジャパンプロジェクト』っていうのが、ちょうど2011年な?確か。あったんですね。

そこで言われていた領域が5つあって、食・観光・建築・ポップカルチャーあと伝統工芸。この5つがクールジャパンだって言われてたんですよ。

じゃあその中で、世の中にない新しいことで、これから日本のGDPに貢献できるくらい大きいマーケットは何だろうと。

千葉県・柏市の情報流通の課題を解決するため、フリーペーパーの発行を主宰した大学生時代

と、ここで学生時代のフリーペーパー事業の経験が影響してくるんですが、地域における情報流通の課題を解決したら、人の流れができて、経済が動いたっていう原体験を持っていたので、その成功体験を活かせるところってなんだろうなっていうのを考えて探していたら、「観光」なんじゃないかって思ったんですね。

どういうことかというと、当時やっていたフリーペーパーは千葉の柏という街でやっていたのですが、高校生までは地元で遊ぶ人も多いものの、大学生になるとみんな電車に乗って原宿で買い物をするようになります。当時はストリート系とか古着とかが流行っていました。

一方で柏にもこだわりのセレクトショップとかビンテージショップとかができていて、地元のお店はもっとお客さんに来て欲しいと思っていたんですね。

そこでフリーペーパーでそのこだわりを伝えだしたら、大学生たちも一定、柏の街に買い物にくるようになった。要するに情報流通に課題があったんですね。

じゃあ観光でお困りごとはないか、それを知るために友達100人にアンケートを取りました。まぁ起業した当時なんて登記ぐらいしかやることないんですよ(笑)

そしたら100人中98人が「旅行先で何するか困る」って答えたんですね。

これが情報流通の課題だ。何の形か分からないけど、ここを解決したらビジネスになるんじゃないか。世の中にもそういう課題解決をしているサービスもないぞと。そう思ったら居ても立ってもいられず、地域に飛んだんです。

地域の事業者との出会い

知り合いを通じて、水上のラフティング事業者や、丹波っていうところのパラグライダーの事業者に話を聞くことにしたんですけど、聞いてたら、この人達めっちゃいい人たちだなって思ったんですよ。

地域の資源を活かして観光産業を作っていきたいとか、地域の自然を活用して五感を使ったサービスの提供機会を作りたいとか。

しかもそれをサステナブルに、自然と一体となって。ゴミ拾いもするし、有害物資とか出さないし、遠くてもなるべく歩くようにするし。

すごいいい人達だなって思ったんですけど、一方でビジネスは…正直厳しいなとも思ったんですよ。

そのときに、ここを自分が何とかしないとダメなんじゃないかって、強烈に思ったんですね。

全国の体験事業者の出会いで、強烈に感じた使命感
丹波では絶景のパラグライダー体験が開催されていた
カオス期を経て、ようやくasoview.comの構想が生まれた

この人達の情報流通の課題を解決していくと、結局、消費者が欲しい情報もそこにあるから、ビジネスが成り立つんじゃないかと思って。

インターネットのサービスで、asoview.comっていうビジネスモデルが生まれました。

でもやってみたら、予約のオペレーションはなかなかうまくいきませんでした。

今でこそサポートデスクが頑張ってくれていますけど、サポートデスクを立ち上げたのは僕なんですよ。

僕がずっと電話対応していたんですね。

 

 

ミッションが決まった瞬間

 

今でも覚えてるんですけど、電話で、「スキューバダイビングを探しているんだ」って言われたことがあって。

なぜスキューバダビングを探しているのか聞いたら、「土日に彼女と、今までに行ったことないところに行きたいと思ってさ」って言われました。

じゃあ今まで行ったことがなければどこでもいいか聞いたら、「ぶっちゃけそうなんだよね」って言われたんですね。

「お兄さんなんか面白いところ知ってる?」って言われたから、長瀞(ながとろ)のラフティングを紹介したら、そこに行ってくれたんですよ。

で後日、「めちゃめちゃ楽しかった」と連絡をくれた。

スキューバダイビングがどこでできるか相談されて、長瀞のラフティングに行ったんですよ。

その時、本当に、ゾゾっときて。

これは、みんなが困ってるんだ、と。これこそがお困りごとじゃないかと。 確かに、なんなら自分も困っているぞと。

自分の時間を豊かにしたいっていうニーズがあっても、アイディアと、方法がないと。俺もないなと。

それまでずっと上流から考えてきた中で、

最終的に「ワクワクをすべての人に」という言葉がまとまったのがその瞬間でした。

ひらめきか、ロジックか

「余暇」と呼ばれる、自分が自由に使える時間の課題解決をするっていうビジネスが、しっくり来たんですよ。

それってこれから世の中に必要とされていくサービスだし、成長していくし、全世界的に『心を豊かにする』って重要なテーマだから、ワールドワイドに広がっていく可能性があると。

だから、僕らはここのマーケットで勝負をするんだっていう、まぁカオス期を経て…こうなったというのが、実際のところです。

中には経営者の方々と話してても、寝てたらある日突然「あ、そうだ●●だ!」って閃いた、みたいなタイプもいるんですよ。

(会場笑)

でも中には、「社会を変えたい」みたいな漠然としたところから始まっている経営者もいて、そこから突き詰めていくと、ここにマーケットがあるんだ、ここで価値を提供するんだ、と気付いて、

仲間との出会いも、パートナーとの出会いも、社会の課題も含めて形作られていったというのが、正直なところです。